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2009.04.10 (Fri)

Aphex Twin「Selected Ambient Works, Vol. 2」

こちらも季刊ブログと化していた。一カ月以上おくと上に広告が出てしまうのだな。春になったので春号というわけではないが更新です。春号といえば、いま出ている『考える人』(新潮社)という雑誌が「ピアノの時間」(2009年春号)という特集で、その中の「私の好きなピアノ・アルバム、ベスト3」というアンケート原稿を頼まれた。奇をてらったわけではないが、その1枚にエイフェックス・ツインの『Drukqs』(ドラックス)というアルバムをとりあげた。そちらのほうでは紙面が限られていたので、ここでほかの作品のことも含めて、もう少し書く。

Drukqs
Drukqs
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Aphex Twin
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エイフェックス・ツインはピアニストではなく、強烈なドラムンベースで90年代のテクノ界を風靡した奇才とされているアーティスト。荒涼とした無機質な空虚感の中に、なにかたとえようもなく純粋な光景が見えてくるような不思議な音楽をつくる。激しく甘さのない機械的なビートで、人間には絶対演奏不可能なフレーズがつづくにもかかわらず、そこから想起されるのは深い静けさだったりする。




テクノはそんなに好きではないのだけど、エイフェックス・ツインがつくりだす風景は、少なくともいまとのころ、ほかの音楽からは得られない。Capsuleなどとはまったくちがうし、数多のテクノのグループともちがう。エイフェックス・ツインだけの風景である。ジャケットは本人(Richard D. Jamesというのが本名)なのだろう、邪悪な笑いを浮かべた顔が使われているものが多い。あまり飾りたくはないが、この邪悪さは嫌いじゃない。

Richard D. James Album
Richard D. James Album
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Aphex Twin
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ただし、このジャケットはあまり好みじゃあないな。↓

Windowlicker
Windowlicker
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Aphex Twin
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『Drukqs』は基本的に脳髄に突き刺さるような無機質で激しい音楽がつづくのだが、中に不意にピアノ、それもおそらくプリペアド・ピアノで演奏された短い曲がまじる。それが本当にこよなく美しい。ただし、その曲だけを取りだしても、あまり意味がなく、この激しい甘さのない世界がつづく中で、不意にそのピアノが現れるのがなんともいい。この短い、シンプルな曲を際だたせるために、全体があるようなそんな音世界がアルバムに広がっている。




耳ざわりのいい曲だけを集めたベスト盤というのもありだとは思うが、いまや世の中がみんなそんなのばかりではないか。クラシックの名曲を集めたものとか、それでも飽きたらず数十秒の名フレーズを集めたものとか、そんなにも時間が惜しいのかよといいたくなるほど無駄を廃したベスト盤ばかりで、なんだかなあという気もするのだ。でも、そんなベスト盤みたいな目で世界を見ていては、やはりだめだと思う。薔薇ばかり咲いている花畑では、一つひとつの薔薇なんて見ない。でも、砂漠の中に、たった一輪だけ咲いている薔薇の花なら、それが心に訴えかけてくるものはぜんぜんちがう。「星の王子様」にもそんな一節があったな。そんなこともあって、『Drukqs』をピアノの名盤として取り上げた。


でも、エイフェックス・ツインで、いちばんの傑作は、『Selected Ambient Works, Vol. 2』だと思う。

Selected Ambient Works, Vol. 2
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アンビエントというと、ブライアン・イーノとかハロルド・バッドとか、あとの癒し系にもつながるような音楽を思い浮かべる人も多いだろう。イーノはけっして、癒し系ではないと思うのだけど、中には聞きやすく、癒しにつながるような作品も多いし、全体として見れば精神を安定させるような音世界だ。しかし、この作品はちがう。ここにあるのは、アンビエントといってもひたすらな不安や怖れだ。怖れといっても、現代音楽にありがちなホラー映画のバックに流れているような音楽ともちがう。クラウス・シュルツや初期のタンジェリン・ドリームともちがう。あちらは異次元というか時間的・空間的に遠く隔たった異界を彷彿とするが、エイフェックス・ツインのこの音楽は、すぐそばで鳴っているような気がしながら、そこには絶対にたどり着けないような妙な距離感が伝わってくる。なんというか、そこに広がるのは、やはりエイフェックス・ツインでしか見えてこない風景なのだ。


透明で穏やかな茫洋としたフレーズともいえないフレーズが漂うように拡散していく。なにかを形容しているわけでもなければ、象徴しているわけでもない。感情にしても、思考にしても、イデオロギーにしても、そうしたこの世界にあるものの形をいっさいなぞろうとしていない。あらゆる予定調和からはるかに遠い。それでありながら、あるいはそれだからこそなのか、そこから広がる音世界はなんともいえなく物悲しい。悲しいのだけど、カタルシスがあるわけではなく、輪郭のない不安がどこまでも冷たく広がっているような乾いた物悲しさだ。


死というものにいちばん近い音楽があるとすれば、こんな音楽かもしれないと思う。ブライアン・イーノのアンビエント・シリーズのタイトルは「Music fot Airports」だったり、「Music for films」だったりしたけれど、これは「Music for the dead」とよびたくなる音楽だ。ただし、レクイエムではない。レクイエムとは、この世からあの世への視線で書かれている気がするのだが、これはちがう。むしろ、あの世からこの世を見つめるような視線を感じてしまう。しかも、そのあの世というのはすぐそばにありながら、あるいはこの同じ空間上にありながらも、けっしてふれることのできない、そんな形で存在しているもののような気がする。死者の存在というのは、そういうものなのではないかとも思う。もっとも、これは勝手な妄想だけれど。


2枚組で一曲一曲が長いし、動画で見たり聞いたりするような音楽ではないし、だれにでも薦められるようなものでもないけれど、自分にとってはとても大切な音楽だ。思考や感情の平衡感覚を見失ったとき、このアルバムを聞くと、すーっといろんなものが鎮静していく。鎮静しすぎてしまうのが怖い。


今後はせめて週刊になるようにします。
ちなみに『考える人』はこれ。↓






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テーマ : 本日のCD・レコード ジャンル : 音楽

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